患者様の矯正治療において、抜歯が必要かどうかは、決断する上で重大なポイントのひとつと思われます。院長が、研修時代を送った東京医科歯科大学矯正歯科の相馬邦道氏(現在日本矯正歯科学会会長)が、「矯正治療は、さまざまな方法が出ては消えという試行錯誤を繰り返しているという真っ最中である。」と、よくお話されていました。
まさに、現在は、良い噛みあわせと、整った歯並びになるという目標に、歯科医師それぞれが異なった方法、考え方での研究を追求している段階であり、実際、国内だけでも30ほどのスタディーグループがあります。
つまり、狭い歯列が多い日本人は、抜歯しないと理想的な歯並びになりにくい場合が多いと考えられる歯科医師もいれば、非抜の方針の歯科医師もいるということです。
患者様のサイドからでは、抜かずにすむにこしたことはないのでしょうが、患者様の一番注意していただきたいのは、抜歯にこだわるがゆえの落とし穴も潜んでいるという点なのです。
ひとりの患者様が相談に来られました。かつて他の病院にて、八重歯が飛び出しており、でこぼだった状態を歯を抜かない矯正治療方針の歯科医院のもとで2年ほど治療をおこない、整った歯並びを得る事ができました。ところが、歯並びは整ったものの、友人たちには、横から見ると口全体が突き出てきたといわれ、ショックを受けます。なんとなく前歯もかみ合わなく感じてきて、気になって相談に来られてのです。
この場合は、重なった歯を整えましたが、ぎゃくに歯全体が広がり、前に飛び出た状態になりました。歯並びを整えることばかりが、気にはなりますが、十分な臨床経験のある認定された専門の矯正歯科医師と、歯と歯の部分を含んだ顎の骨格の治療後の状態をじっくりと、説明を受け、確認し、理解し、納得することが大切です。 |